成果をあげる社長は社員の不満を力にする。2流の社長は話も聞かずに抑えつける
希代の経営者・小山昇が語る「パート社員・戦力化」の要諦 第2回
月収10万円に満たないパートが課長ふたりを采配
文句を言うのは「体験がないから」です。体験をさせると「隣の芝は、青くなかった」ことが身にしみて、文句を言わなくなります。自分の立場だけで後ろ向きの文句を言っていた人も、文句を言われる立場を経験すれば、周囲のことを考えるようになります。
一方、「会社を改善してほしい」という前向きな文句は、向上心のあらわれです。向上心のない人は、「ここを直したほうがいい」「あそこは良くない」といった文句を言ったりはしません。ですから、前向きな文句は、見方を変えると、「今のやり方よりも、こういうやり方のほうがいいのではないか」という、パートからの改善提案として受け止めることができます。
会社改善のための前向きな文句を言われたときは、「だったら、あなたに改善してほしい」と言うことが大切です。
私が社長になった当初、武蔵野のナンバー2は、創業者・藤本寅雄の奥さんの妹、多田博子でした。
新人パートが入ったとき、多田が、「今度入ってきた佐々木さんは、『こうしたほうがいい』『この部分を変えたほうがいい』と文句ばかり言う」と嘆くので、私は、佐々木を管理部門のチーフにしました。「文句を言うのは、それだけ問題意識を持って仕事をしている証拠だ」と判断したからです。
その後、佐々木は水を得た魚のように業務改善に取り組み、結果を出した。多田の退任後はコールセンター事務管理の部長に抜擢し、「パート部長」として力を発揮してくれました(現在は退職)。
ご主人の扶養から外れないことが彼女の条件だったので、「昼間に要所だけ出社して、仕事をして帰宅する」という生活を送っていました。月収が10万円に満たないパートが、その数倍の給料をもらっている課長ふたりを采配しました。佐々木の薫陶を受けたのは滝澤美佳子(現部長)です。
多くの社長は、「文句を言ってくるパートは、うっとうしい」と決めつけ、話も聞かずに上から抑えつけます。だから、問題意識を持っているパート(優秀なパート)を戦力化できません。
<『儲かりたいならパート社員を武器にしなさい』(ベスト新書)をもとに構成>
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